また値上げ?損保大手の決算から見える「車を持つ家計」に起きている変化
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女性 / 30代投稿日: 2026/05/21
結論から言うと、自動車保険は「なんとなく高くなっている」のではなく、車を取り巻くコスト全体が上がっていることを背景に、今後も家計負担が増えやすい分野になっています。
今回注目したいのは、損保大手3グループの2026年3月期決算です。
2026年5月20日に発表された決算では、東京海上ホールディングス、MS&ADホールディングス、SOMPOホールディングスの大手3グループがいずれも大きな規模の利益を計上しています。たとえば、東京海上ホールディングスの経常収益は8兆8,722億円、MS&ADホールディングスの経常利益は1兆1,202億円、SOMPOホールディングスの親会社所有者に帰属する当期利益は6,400億円とされています。
一見すると、「そんなに利益が出ているなら、自動車保険料を上げなくてもいいのでは?」と思うかもしれません。
ただ、ここが少しややこしいところです。
損保会社全体としては、海外保険事業や資産運用、政策株式の売却益などで利益が出ていても、個別の商品である自動車保険の収支は別に見なければいけません。実際、すでに2026年1月には損害保険ジャパン、三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保の3社が、自動車保険料を平均6〜7.5%引き上げています。内訳は、損保ジャパンが約7.5%、三井住友海上が約7%、あいおいニッセイ同和損保が約6%です。
また、東京海上日動火災保険も、2025年10月から平均約8.5%の値上げを明らかにしていました。つまり、大手損保ではすでに自動車保険料の値上げが一巡しており、今後も契約更新のタイミングで「思ったより高い」と感じる人が増える可能性があります。
では、なぜ自動車保険料は上がっているのでしょうか。
大きな理由は、事故が起きたときに保険会社が支払うお金が増えているからです。
各社が値上げの理由として挙げているのは、物価高や人件費上昇による自動車修理費の増加、ひょうなどの自然災害による修理の増加、保険金支払いの増加です。
昔の車と比べると、今の車は安全性能が上がっています。カメラ、センサー、自動ブレーキ、運転支援システムなどが搭載され、事故を防ぐ力は高まっています。
しかし、裏を返すと、ぶつけたときの修理費は高くなりやすい。
バンパー交換だけで済んでいたものが、センサーやカメラの調整まで必要になる。小さな接触事故でも、部品代や工賃が高くなる。さらに、人件費や物流費、部品価格も上がっている。
つまり、事故の件数だけでなく、「1件あたりの修理代」が上がっていることが、自動車保険料に跳ね返っているのです。
また、損害保険料率算出機構は、自動車保険の参考純率について、会員保険会社から集めた契約・支払いデータをもとに、社会環境の変化も考慮して算出していると説明しています。参考純率は毎年度検証され、必要があれば改定の届出が行われます。
ここで大切なのは、自動車保険料の値上げは「保険会社がなんとなく決めているもの」ではなく、事故・修理費・自然災害・物価・人件費といった現実のコスト変化を反映しているという点です。
もちろん、消費者としては納得しづらい部分もあります。
「給料はそこまで増えていないのに、ガソリン代も、車検代も、保険料も上がる」
「車が必要な地域では、簡単に手放せない」
「でも、保険を削りすぎるのも怖い」
これはかなり現実的な悩みです。
特に地方や郊外では、車は贅沢品ではなく生活インフラです。通勤、買い物、子どもの送迎、親の通院など、車がないと生活が成り立たない家庭も多いでしょう。
その意味で、自動車保険料の値上げは、単なる保険商品の話ではありません。
「車を持ち続けるコスト」がじわじわ上がっている、という家計全体の問題として考える必要があります。
では、家計として何をすればよいのでしょうか。
まず、最初にやってはいけないのは、保険料だけを見て補償を削りすぎることです。
自動車保険は、普段は「払っているだけ」に見えます。だから、家計が苦しくなると「できるだけ安くしたい」と思いやすい。
しかし、自動車保険で本当に怖いのは、自分の車の修理代よりも、相手にケガをさせた場合や、相手の車・物を壊した場合です。
対人賠償、対物賠償は、基本的に無制限を前提に考えた方がよいです。ここを削って数百円、数千円安くしても、万が一のリスクに対して見合わないことが多いからです。
一方で、見直し余地があるのは、車両保険です。
車両保険は、自分の車の修理代に備える補償です。新車や高額車、ローンが残っている車であれば重要性は高いですが、年式が古くなって車の時価が下がっている場合、保険料に対して得られる補償が小さくなっていることがあります。
たとえば、車両保険をつけて年間保険料が大きく上がっているのに、実際に全損時に受け取れる保険金は思ったほど多くない、というケースもあります。
この場合は、車両保険を外す、一般型からエコノミー型にする、免責金額を上げる、といった見直しが選択肢になります。
次に確認したいのは、運転者の範囲です。
家族全員が運転する前提のままになっている。
子どもが独立したのに、年齢条件を変えていない。
配偶者しか運転しないのに、本人・配偶者限定にしていない。
こうした条件のズレは、保険料を押し上げる原因になります。
自動車保険は、契約時には合っていた条件が、数年後には合わなくなっていることがよくあります。家族構成や車の使い方が変わったら、保険も一緒に見直す必要があります。
また、特約の重複も見落としやすいポイントです。
弁護士費用特約、個人賠償責任特約、ファミリーバイク特約などは便利ですが、家族の別の自動車保険や火災保険、クレジットカード付帯の保険と重複している場合があります。
もちろん、重複しているから必ず不要とは限りません。補償範囲や対象者が違うこともあります。
ただ、「何となく安心だから全部つけている」という状態なら、一度整理する価値はあります。
そして、もう一つ大事なのが、保険会社の比較です。
自動車保険は、同じような補償内容でも、保険会社によって保険料が変わります。代理店型とネット型でも違いがあります。
代理店型は、事故時や契約時に相談しやすい安心感があります。
ネット型は、保険料を抑えやすい傾向があります。
どちらが正解というより、自分が何を重視するかです。
事故対応を誰かに相談しながら進めたい人。
保険料をできるだけ抑えたい人。
車の使用頻度が少ない人。
家族で複数台持っている人。
高齢の親の車も含めて考えたい人。
置かれている状況によって、選ぶべき保険は変わります。
今回の値上げ局面で大切なのは、「高くなったから安いところに変える」だけではなく、「自分に必要な補償を残したうえで、ムダを削る」という順番です。
家計の見直しでは、どうしても目の前の支出を下げることに意識が向きます。
でも、自動車保険は、削り方を間違えると、いざというときに家計を守れなくなります。
たとえば、月数百円を節約するために必要な補償を外してしまい、事故後に何十万円、何百万円単位の負担が出るなら、本末転倒です。
逆に、何年も見直していない契約のまま、今の生活に合っていない補償へ払い続けているなら、それももったいない。
つまり、自動車保険の見直しは、「安くする作業」ではなく、「今の暮らしに合う形へ整える作業」と考えた方がよいです。
今回の損保大手の決算を見ると、保険会社全体としては大きな利益を出している一方で、自動車保険を取り巻くコストは上がり続けています。MS&ADホールディングスは、2026年3月期の業績予想を上方修正した理由として、自然災害による発生保険金が予想を下回ったこと、海外事業の改善、政策株式売却益が予想を上回ったことなどを挙げています。
これは裏を返すと、損保会社の利益は「自動車保険だけ」で決まっているわけではない、ということです。
だからこそ、ニュースで「損保大手が高利益」と聞いたときに、単純に「それなら保険料を下げてほしい」と見るだけでは、家計判断としては少し足りません。
見るべきなのは、自分の契約です。
次の更新でいくら上がるのか。
上がった理由は何か。
車両保険は今の車に見合っているか。
運転者条件は今の家族構成に合っているか。
特約は重複していないか。
ネット型・代理店型を含めて比較したか。
保険料を下げるために、削ってはいけない補償まで削っていないか。
このあたりを確認するだけでも、保険料の上昇に対してかなり冷静に向き合えるはずです。
自動車保険の値上げは、家計にとってうれしい話ではありません。
ただ、こういうニュースは、保険を見直すよいタイミングでもあります。
何年も前に入ったままの保険。
ディーラーで勧められるまま入った保険。
更新案内が来ても、毎年そのまま継続している保険。
そうした契約ほど、今の暮らしとズレている可能性があります。
保険料が上がる局面では、「また高くなるのか」と感じるだけで終わらせず、家計全体の固定費として見直すことが大切です。
自動車保険は、安ければよいものではありません。
でも、高ければ安心というものでもありません。
大切なのは、自分の車の使い方、家族構成、貯蓄状況、事故時にどこまで自己負担できるかを踏まえて、必要な補償と不要な補償を分けることです。
今回の値上げニュースは、その整理を始めるきっかけとして捉えるとよいでしょう。
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この記事を読んで、
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